印象だけに終わらない、キャリアにつながる話し方口癖が自分のキャリアを作る? 無意識の口癖には価値観が現れる。特にダメ出しの時……
長崎大学准教授/スピーチコンサルタントの矢野香さんに、「口癖から自分のキャッチコピーをつくり、ビジネス相手に爪痕を残す」ためのキャッチコピーの見つけ方、伝え方を教わります。
プロフィール
長崎大学准教授、スピーチコンサルタント矢野香
今、ChatGPTによって文章が自動生成される一方で、人とのコミュニケーションでは「話す力」が圧倒的に求められています。プレゼン、会議、コミュニケーションなどで「話す立場」におかれる40代キャリアに向けて、長崎大学准教授・スピーチコンサルタントの矢野香氏に専門分野である心理学・コミュニケーション論の研究とNHKキャスターの経験をもとに「爪痕を残す話し方」を学ぶ連載です。
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スピーチコンサルタントの矢野香です。キャリアアップしたい女性が「好印象だけに終わらない、爪痕を残す」方法のひとつとして、「個人のキャッチコピーの伝え方」をご紹介します。
目次
キャッチコピーは「口癖」から見つかる
他者との違いを印象づけ、爪痕を残すことに有効なのが、自分のキャッチコピーをつくることです。「○○さんといえば、このフレーズ」と思い出してもらうようにするのです。
ポイントは、普段に話している内容とキャッチコピーの一貫性。キャッチコピーを口癖からつくると、自然と一貫性がでて説得力が増します。
いつも「感謝」と言っている、いつも「効率性」を確認するなど、口癖は誰にでもあります。口癖にはその人の評価基準=価値観が出ています。ビジネス場面では、特にダメ出しをする場面で口癖が明確になります。
たとえば、ある女性管理職は部下に対して「もっとよく考えてよ」が口癖。聞くと、コンサルタント出身の彼女は、熟考することを大切にしているそうです。そこで彼女は「もう一度考える」をキャッチコピーとしました。プレゼンテーションや会議で自分の発言を録音してみたり、周りの人や家族に聞いてみたりして口癖を見つけてみましょう。
口癖がわからない方のために、見つけるヒントとなるワークをご紹介します。
電車やバスの中、お店などで「ちょっと、あなたね」と一言モノ申したくなる人を見つけます。電車の中で、お年寄りや怪我をしている人がいるのに優先席に座って席を譲らない人や、店内で大声を出して店員にクレームをつけている人、信号無視をした人など、対象はさまざまです。小姑のようでかまいません。「ちょっと、あなたね」と一言言いたくなる相手です。
ある士業の女性クライアントは、自分のことのことばかり一方的にしゃべりつづける人にイラッとしたとのこと。その方の口癖は「相手のことも考えて」でした。そこで彼女のキャッチコピーは「相手目線」としました。
文句のなかにある「自分の強み」
小姑としてのあなたはどんな文句を言いたくなりましたか。「もっと○○しなさいよ」。もしくは「○○できていないわよ」。この○○のところが、あなたの価値観です。
クライアントに、レストランに予約無しで飛び込んだときに「申し訳ございません。予約でいっぱいです」と言われてイラッとした方がいらっしゃいます。謝罪もしているし接遇としてはなんの問題もありません。しかし、彼女の価値観としては納得できない部分があったためイラついてしまったのです。
彼女によると、「予約でいっぱいです、で終わるのではなく、「一時間後なら空いています」とか代替え案を提示することができないの? お客さんを逃している、と思った」とのこと。ここからわかるのは、「新しい選択肢を提案する」「鋭い次の一手を考える」ことを重視しているという彼女の価値観です。ビジネスにおいては、相手にどんな価値を提供できるかであなたの存在意義が決まります。
自分が大事にしている価値観を相手に言語化して伝えるということは、あなたの強みをわかりやすく伝えることにつながります。
私事で恐縮ですが、私の口癖は「軽い」です。この口癖を発掘してくださったのは初めての本を制作したときの担当編集者さんです。打合せの段階で、私が「その言葉遣いは軽いから舐められます」「そういう話し方するから軽くなってしまうんです」「その服装では軽すぎるからビジネスでは信頼されません」などとよく言っていたそうなのです。自覚はありませんでしたが。この口癖をもとに生まれたのが拙著『その話し方では軽すぎます! 』です。
僭越ながら、軽くない話し方、信頼される話し方を提供することに特化してコンサルティングをさせていただいているおかげで、いまがあると自負しております。口癖をみつけ、私の強みを見つけてくださった方々のお陰です。
口癖から自分の価値観を知ることは、自分の強みを理解することにつながります。ぜひ見つけてみましょう。
自分には強みがないと思っていらっしゃる方にも、必ずあります。他の人はスルーするかもしれないけれど、どうしても自分はそこが気になってしまうというところにあなたの価値が眠っています。掘り下げてみてください。ビジネスにつながる宝が眠っているはずです。
キャッチコピーは「救命の言葉」
キャッチコピーは自分の強みを表現する言葉です。そのためビジネスシーンで同業他者とあなたを差別化するものとして有効に使うことができます。さらには、人前にでるときにはあなたを助けてくれる言葉にもなります。
たとえば、プレゼンテーションで緊張してしまい、次に何を言うのかを忘れてしまったというようなピンチの場面。そんなときも慌てず騒がずキャッチコピーを言うだけです。「…ということで、私が一番大事にしているのは、『鋭い次の一手を考える』ということです。今回ご提案しているような企画は、御社にとって「次の一手」となるのではないかと考えますが、いかがでしょうか」というように、キャッチコピーでつなぎます。
「いかがでしょうか」と問いかけることで時間稼ぎもでき、その間に、何を話そうとしていたかを思い出すのです。かりに思い出せないまま終わってしまったとしても大丈夫。相手からは要点を整理し、あなたの強みを強調して終わった堂々としたプレゼンにしかみえません。頭が真っ白になったときは、自分のキャッチコピーを話すことでなんとかまとまりをつける。そのうえ、自分の強みをアピールしたことにもなるのです。キャッチコピーは人前に立つ時に用意しておきたい「救命の言葉」といえるでしょう。
また、キャッチコピーは何回も口にしていいのでしょうか、との質問をよくいただきます。時間の長さに関係なく、スピーチやプレゼン中に最低3回は言ってくださいとお答えしています。聞く回数が多いほど、相手に印象づけ、爪痕を残せるようになっていきます。ぜひいろんな場面に取り入れていきましょう。「また言ってるよ」と思われるくらい、相手が覚えてしまうくらいでちょうどよいのです。そうするとあなたの価値観に対して相手も好意的にとらえてくれるようになります。心理学でいう「単純接触の原理」です。
次回は、話し上手な人が実践しているPREP法に個性をプラスして「あなたにしかできない話」をする方法をお伝えします。
写真/Canva
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この記事を書いた人
- 「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。
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