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印象だけに終わらない、キャリアにつながる話し方キャリアアップした女性が実践。「動かない、左右対称、曲線」で信頼度をぐっと上げる

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ジェスチャー、アイコンタクト、ファッション。それぞれに「動かない、左右対称、曲線」の3つの身体表現を取り入れ、信頼される女性として爪痕を残す方法をスピーチコンサルタントの矢野香さんに聞きます。

プロフィール

長崎大学准教授、スピーチコンサルタント矢野香

やのかおり スピーチコンサルタント、長崎大学准教授。博士(総合社会文化)。NHKキャスターとして報道番組を17年担当した後、独立。著書に『最強リーダーの話す力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『【NHK式+心理学】一分で一生の信頼を勝ち取る法 』(ダイヤモンド社)、などがある。

今、ChatGPTによって文章が自動生成される一方で、人とのコミュニケーションでは「話す力」が圧倒的に求められています。プレゼン、会議、コミュニケーションなどで「話す立場」におかれる40代キャリアに向けて、長崎大学准教授・スピーチコンサルタントの矢野香氏に専門分野である心理学・コミュニケーション論の研究とNHKキャスターの経験をもとに「爪痕を残す話し方」を学ぶ連載です。

* * *

スピーチコンサルタントの矢野香です。「話し方」はコミュニケーション能力であると同時に「ビジネススキル」です。今回は、キャリアアップしたい女性がビジネス場面にふさわしい信頼性を身につけるために覚えておきたい3つの身体表現をお伝えします。

ビジネス相手から信頼される身体表現とは?

ビジネスの人間関係において最も大事なこと。それは信頼関係を築くことでしょう。この人なら大丈夫、この人と一緒に仕事をしたいと思ってもらえるかどうか。

知り合ってから間もないにもかかわらず、または、オンラインの打合せがメインで対面したことがないにもかかわらず、相手と信頼関係を築くのがうまい人がいます。

その人たちが身につけている「話し方」のスキルのなかに、身体表現があります。今回は、「動かない、左右対称、曲線」の3つの身体表現についてご紹介しましょう。

信頼される身体表現①:動かない

まずは、動かないこと。必要以上に動くことは相手にとってノイズとなってしまうからです。

相手の話しを聞くときにしっかりとうなずいたり、相づちを打ったりすることを、心理学では「言語調整動作」といいます。相手に「聞いています」と示すしぐさです。この「言語調整動作」で動きすぎると信頼性を損ねるので注意が必要です。たとえば「うん、うん、うん」と何度もうなずいたり、「なるほど、なるほど」と頻繁に相づちを打ったりしていると、「なんか調子が良すぎる人だなぁ。ちゃんと聞いているのかな?」と思われる可能性が出てきます。これは傾聴スキルを学んだ経験があるなど意識が高い方がやってしまいがちな失敗例です。

大事なのはむやみに動かないこと。たとえば、相手の話を聞くときは話の終わりかけに一度うなずく。一回最後だけ、という基準値を明確にしたうえで、「話をもっと聞きたい」と思ったら三回連続でうなずきます。重要な場面だけで動き、その他は動きすぎないことです。

自分が話すときにも、動きすぎはノイズとなるためお勧めしません。人には、無意識のうちに動くものを見てしまうという本能があります。そのためあなたが話をしているときに顔の周辺に動くものがあると、相手の意識がそちらに向いてしまいます。

NHKの研修では、女性キャスター限定でメイクやファッションの講義もひらかれていました。そこで習ったのは、ニュースを読むときは揺れるイヤリングをしないというルールです。

視聴者がしっかりとニュースの内容に集中することができるように、長さのある揺れるイヤリングをつけないということです。そのため、小さなパールや金などの動かないイヤリングを身につけるようにしていました。もしあなたがしっかりと話に集中して聞いてもらいたいのなら、動かないイヤリングやピアス、ネックレスを身につけましょう。もちろんこれはバラエティー番組などではニュースほどは厳密なルールではありませんでした。また民放ではニュースでも揺れるアクセサリーをつけているのを見かけるようです。あなたも時と場合によって使い分けてみてください。

 パールは品格があってビジネスシーンでも重宝する

信頼される身体表現②:左右対称

両手を使うジェスチャー

言葉ではなく、視覚で伝える身体表現では、左右対称は「平等性」「公平性」を表現します。そこで、左右対称を上手に活用していただきたいのがジェスチャーとアイコンタクトです。

ジェスチャーは誰でも知らず知らずのうちに出ています。特に一生けん命に何かを伝えようとするとき、英語やフランス語など母国語以外の言葉を話すときにジェスチャーが増える傾向にあるようです。しかし、ジェスチャーも多すぎると他人が見たら、手がバタバタしているだけ。前述のうなずきすぎと同じようにノイズにしかなりません。強調したいところだけで手を動かしてはじめて効果を発揮できます。

リーダーシップを表現したい場合、「一緒に頑張りましょう」というような相手を動かす言葉と一緒に手を出す。プレゼンでは「今日ご紹介したいのはこちらの企画です」といいながら、その箇所について書かれた書類や画面を指し示す、などがあります。

おすすめしたいのは、両手があいているのであれば、左右対称に両手を広げるジェスチャーです。「平等性」「公平性」を伝えることができます。

この左右対称ジェスチャーは、トヨタ自動車会長の豊田章男氏、ドイツのメルケル元首相が効果的に使っています。お二人とも強調したいところだけで両手を上げます。YouTubeなどで検索していただくか、豊田氏の場合は公式のトヨタイムズにも動画が公開されています。こうした動画をお手本として真似してみてください。なお、豊田氏の動画は、よりリーダーシップを表現したいときは女性でも使えるジェスチャーの良い見本です。

アイデリバリー

手だけではなく、眼の表現も左右対称を目指しましょう。具体的にはどの方向をみて話すかというアイデリバリーと呼ばれるスキルです。左右対称のアイデリバリーは、同じく「平等性」「公平性」を印象づけます。

左右対称のアイデリバリーが上手なのが、オバマ元アメリカ合衆国大統領です。彼はスピーチをしている間、左右同じ数だけ目を向けていたという研究データもあります。

私たちも会議やプレゼンテーション、飲み会などで大勢の人に向かって話さなければならない場合、左右対称に見ながら話しましょう。ついやってしまいがちなのは、知っている人や仲の良い人のほうばかり見てしまう。うなずいてくれる人、笑って聞いてくれる人など反応がある人ばかりを見てしまうことです。こうした周囲の環境に影響されてしまうのではなく、自分の向くべき方向をむけるように主体的にコントロールできるようになることが理想です。

信頼される身体表現③:曲線を使う

信頼性を意識しすぎると、どうしても固くなりがち。堅苦しい敬語、堅苦しい定型文、堅苦しい無難なスーツ。それではせっかくのあなたらしさ、女性らしさがそこなわれてしまいます。大切なのは、軽すぎず堅苦しすぎずという硬軟のバランスです。身体表現でこのバランスをうまく表現するには、直線か曲線かを意識してみるとよいでしょう。

ビジネスの世界では直線が多く、建物や工業製品をはじめ、テーラードスーツも直線です。一方、曲線なのは樹木や花など、自然界にあるもの。ジャケットでも丸襟やフリルといった曲線のデザインを自然と取り入れられるのはウィメンズの強みです。

ぜひ鏡で全身をチェックして、直線と曲線のバランスを確認してみましょう。

おすすめは、口の周辺に曲線を取り入れることです。「動かない」でご説明したように、人は動くものを見るという本能があるからです。あなたが話しているときに動いているのは、口です。ですから、口元に曲線をもってくることで、かちっとした定番のスーツを着て信頼性をメインに表現しながらも、話しかけやすさや親しみやすさをスパイスとして印象づけることができます。

口元の曲線とは、襟に丸みのあるジャケットを着る。襟元にスカーフを巻く、丸い円を描いたようなブローチを付けてみる、などです。丸眼鏡もいいですね。

 口の周辺に曲線を取り入れるだけで、柔らかい雰囲気を演出できる

ジェスチャーでも曲線を意識してみましょう。資料の該当部分を手のひらで示し、少し指に丸みを持たせながら説明する。誰かに質問するとき、手を相手にそのまま直線的にむけて「あなたはどう思いますか?」と聞いたら責めているように伝わってしまうときもあります。そこで、ふわっと曲線の弧を描き、ボールを抱えるような丸みをつけたまま、相手に手のひらを向けて質問すると印象が変わります。

このように、直線は強さを、曲線は柔らかさを伝えます。普段は曲線にしておいて、強調したいところや反論しなければならない場面では手の甲=直線を見せるなど、場面によって変化をつけていきましょう。

今回ご紹介した3つの身体表現は、たとえおなじ表現を取り入れたとしても、他人と全く同じになることはありません。あなたの体形、手の長さ、顔つきなどあなたの身体という唯一無二のものをつかって伝えるスキルだからです。

自分の身体には「動かない、左右対称、曲線」の3つのうち、どれが一番相性がよさそうか。いろいろと試してみて、ぜひ自分の得意な身体表現を見つけてみてください。

次回は、あなたの強みを印象づけるための「個人のキャッチコピーの作り方」についてご紹介します。

写真/Canva

この記事を書いた人

I am 編集部
I am 編集部
「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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