好きを仕事アナウンサーという仕事を通して出会った「整理収納」という新たなテーマ。2つを掛け合わせて「ことばの片付け士」に(ことばの片づけ士/草野茜さん)

多様な働き方のリアルを聞きました!どうやって自分の仕事を確立したのか。アナウンサーとして「防災×整理収納」というテーマで取材したことを機に、整理収納アドバイザー資格を取得して「ことばの片づけ士」という自分の仕事を生み出した草野茜さんに聞きました。

プロフィール
ことばの片づけ士(アナウンサー・整理収納アドバイザー)草野茜
仕事内容と自分らしいビジネスアイデアの見つけ方
どんな仕事をしていますか?

自称「ことばの片づけ士」です。整理収納スキルを生かした、アナウンスの仕事という位置づけです。
私はこれまで10年以上、放送局に勤務しアナウンスの仕事に携わりました。キャスターやリポーターなどの出演のみならず、構成やコメント作成など、様々な経験をしました。広い意味で「伝える」ということ自体がすべて、アナウンスの仕事につながるという認識があります。また、伝えてきたジャンルも、報道や情報、スポーツなど、多岐に渡ります。私は、その中で、地震や防災をテーマにした取材も経験し、日々の整理収納が防災につながるのではないかと思い至り、「整理収納」の専門性を磨きたいと思いました。
アナウンサーとして10年以上の経験があるプロで、整理収納の知識や経験があるという両軸があるからこそ、スッキリと片づいた部屋のように、分かりやすく伝えることができると思っています。
具体的には、MCやナレーションをはじめ、整理収納アドバイザー2級認定講座や整理収納アドバイザー2級認定講師志望者向け話し方講座の講師などを務めています。
今の仕事のキャリアは?

徐々に今の仕事に近づきました。なので、明確に〇年というのは難しいのですが・・・アナウンサーという好きが“メイン”の仕事になったNHK和歌山から考えると11年目。「ことばの片づけ士」としては、フリーになったときからと考えると3年目です。
なぜ、今の仕事を「自分の仕事」にしたのですか?

アナウンサーは4歳の頃からの夢でした。車の中で聞いたラジオで「アナウンサー」という職業を知ってからです。遠くにいる人の声が自分の元へ届いて伝わることに心惹かれたのだと思います。高校時代は放送部で、野球のウグイス嬢を経験しました。
就職活動はアナウンサー1本。大学卒業後も目指しました。そのときのアルバイトは、テレフォンアポインターや百貨店での接客、選挙ウグイスなど、自分がアナウンサーに近づけると感じた仕事を選びました。募集のないところにも自ら履歴書を送り、ケーブルテレビでキャスターやリポーターを経験させていただくことができました。その後、NHK岐阜放送局の記者班のリポーターに内定。NHK和歌山とNHK宇都宮で、アナウンス班のキャスター・リポーターとなりました。NHKは10年間勤務しました。
NHK岐阜に勤務した約1年後に東日本大震災が発生しました。NHK和歌山では、南海トラフ巨大地震に備える「防災」のテーマを取材しました。その頃から「整理収納」は、自分も含めて多くの人の「防災」につながるのではないかと思うようになりました。NHK宇都宮でも「整理収納×防災」を取材。片づけが苦手でしたが、取材させていただいた皆さんから教わったことを実践したり、「整理収納アドバイザー」の資格を取得したりすることで整理収納ができるようになり、好きになりました。そして、たくさんの人の役に立つ上、自分が好きな「整理収納」をより多くの人に伝えていきたいと思うようになりました。
今の仕事は好きや得意なことですか?

「人前で話すこと」も「片づけ」も苦手だったので「困り事」でした。苦手を克服したからこそ、「苦手でも大丈夫です」ということを、自信を持って伝えられます。できなかったことができるようになるというのは、何でもできるような前向きな気持ちになれると思います。
なぜ、今の仕事がビジネスとして成り立つと思ったのですか?

アナウンサーと整理収納アドバイザーは、コラボすることで魅力が増すと感じます。
アナウンサーは、人に伝える仕事。内容がとっちらかってしまって分かりにくい話も、整理収納の理論を応用することで、伝わりやすくすることができます。
また、整理収納アドバイザーは、「整理収納」の言葉に着目しがちですが、「アドバイザー」という人に伝える仕事です。なので、アナウンサーとしての知識やスキルを活かせると思いました。
「自分の仕事」としてやっていくと決めてから、やったことはなんですか?

整理収納アドバイザーの資格は1級を取得することで整理収納のプロとして活動することができます。NHKで働いているうちに1級を取得することを目指しました。
あなたの「強み」「弱み」は?

強みは、苦手なことを得意にして、仕事にしたこと。
弱みは、行動するときとしないときの差が激しいこと。
自分の強みをどう仕事に活かしていますか?

「人前で話すこと」は緊張して言いたいことをうまく言葉で表現できなかったので、苦手でした。「片づけ」は、つい後回しにしてしまうモチベーションが上がらない作業という固定観念があったので、苦手でした。だからこそ、そんな苦手を抱えている人の気持ちが分かるので、活かせていると思います。
自分の弱みをどう克服していますか?

行動するときはスケジュールをぎゅうぎゅう詰めに、休み無しに働くようなことがあります。行動しないときは、休んでばかりです。
ただ、整理収納でも「余白」が大切であるように、自分自身の体調を整えたり仕事以外のことに目を向けたりするのも大事な時間だと捉えています。
もちろん、相手がいるときは迷惑をかけないように気をつけています。
ビジネスを立ち上げる時の最大の壁は?

新型コロナウイルス感染拡大のため、在宅でしか仕事ができなかったこと。壁を乗り越えるために、ひたすら整理収納を行いました。整理収納や話し方の講座でお伝えできるネタのストックにもなると思ったからです。
そのとき、NHKで働いていたときのノートなどの書類を整理したことで、次に何をすればよいのかが見えたように思います。今となっては自分の中で当たり前だと思っていることも、習った記録があるのです。自宅の整理収納を行いながら、考え方や方法、コツなど「きっとこれは、学んでない人にとっては有益な情報だなぁ」と気づき、講座の内容にアレンジして盛り込みました。
整理収納することで、講座の内容でお伝えできるようなネタが見つかったというわけです。
ビジネスを立ち上げる前に何を準備しましたか?

NHKで働いているときから、将来を意識して資格を取得しました。フリーアナウンサーは飽和状態だと認識していたため、アナウンス以外のスキルを身につける必要があると思ったからです。そんな私の気持ちにピッタリだったのが、整理収納アドバイザーの資格でした。
ビジネスを立ち上げてぶつかった壁は?

フリーになることを決意したのは2019年の秋で、2020年3月にNHKを辞めました。早く次のステージに進みたかったので、辞めることに迷いはありませんでした。
辞めた直後、2020年4月に緊急事態宣言が出ました。新型コロナウイルスの流行は全くの予想外でしたが、後戻りできない状況でした。オンラインを活用して資格を取るなど、整理収納の知識を増やすことに専念しました。想定外の事態にどう対応するか・・・というよりは、想定外は起きると考えて行動する必要があることを学びました。
1人社長ですか? それともチームですか?

1人です。
仕事に求める優先順位は?

少しでも「話して人に伝える」要素があること。「話す」ことと「整理する」ことの要素が濃いことが「ことばの片づけ士」らしいと思い、大切にしています。
法人化していますか?

法人化していません。法人化するよりも、まず自分自身が「ことばの片づけ士」としてもっと経験を積んでいきたいと思っているからです。今の自分は法人化を視野に入れていませんが、考える可能性はなきにしもあらずです。
会社員を辞めてから、今の仕事をはじめましたか? それとも副業などをしながら、一本立ちしましたか?

NHKを辞めた後すぐに緊急事態宣言が出て、仕事もありませんでした。
実家に住み、貯金も使って、整理収納の資格の勉強やオンライン講座に参加するなどしました。半年後、地元のコミュニティFMのラジオパーソナリティに採用していただき、週に2回、2時間番組を担当。その中で「お片づけコーナー」を企画して伝えたことが「ことばの片づけ士」としての第一歩になると思います。
一本立ちはできず、その後、副業やアルバイトなどの仕事も掛け持ちしました。それも極力「人に伝える」や「整理収納」の要素がある仕事にしました。
現在、本業や副業など関係なく、かけ合わせて「ことばの片づけ士」としています。
はじめての仕事はどのように獲得しましたか?

NHKを辞めたあと、地元のコミュニティFMのパーソナリティとして「片づけ情報」を伝えたことが「ことばの片づけ士」としてはじめての仕事に該当するかと思います。それはパーソナリティの募集に応募しました。
最初に自分の力で稼いだお金を得たときの感想は? また、その額はいくら?

ラジオで自分が好きなように片づけを伝えることができて、その対価なので、うれしかったです。時給にすると、アルバイトの平均時給の2倍より少し多いくらいです。
価格はどのように決めましたか? 価格設定で悩んだことは?

現在は、それぞれ既定の価格がある仕事を中心に行っています。
ビジネスが軌道に乗るまでの期間とその間のやりくりは?

徐々に軌道に乗っている状況なので、今もまだその途中というのが一番近い答えです。ただ、整理収納のおかげでムダ買いが減っていることもあり、金銭的に耐えているという感覚はありません。