人生を変えるI amな本能力主義を問い直すリーダーのための組織開発『職場で傷つく』勅使川原真衣

「優秀ならば、傷つかないのか?」
「職場で傷ついたなんて言ったら負けなのか?」
本書は、そんな問いに正面から向き合う意欲作です。『「能力」の生きづらさをほぐす』で注目を集めた著者・勅使川原真衣氏が、これまで見過ごされてきた「職場の傷つき」に光を当て、組織開発の新しい視座を提示します職場で傷つく。
リーダーや管理職、人事担当者、そして日々の職務に悩むすべての働く人にとって、「傷つき」をなきものにせず可視化することが、健全な組織づくりの第一歩であると説きます。
目次
本の概要
厚生労働省の調査では、働く人の8割以上が強い不安やストレスを抱えているという現実があります職場で傷つく。それにもかかわらず、職場での「傷つき」はハラスメントや精神疾患の文脈でしか語られず、日常の小さな痛みは「なかったこと」にされがちです。
本書は、こうした日常的な「職場の傷つき」を棚卸しし、なぜ言えないのか・言わせないのかという構造を解き明かします。そのうえで、個人・組織・社会が取るべきアクションを提示。リーダーが「傷つき」に気づき、受け止めることこそが組織変革の出発点になると示します。
職場で傷つくとは?
1. 評価に潜む「見えない傷」
ある大手メーカー人事部課長の事例では、「主体性に課題あり」との評価が下された瞬間に深い傷が生じました。形式的なジャッジが本人の努力を否定し、「傷つき」を生む構造が浮かび上がります職場で傷つく。
2. 「真面目な社員」の闇落ち
ビッグモーター社のケースを例に、真面目で誠実な社員ほど理不尽な環境で追い詰められやすい現実が語られます。「闇落ち」は個人の弱さではなく、組織の未対応が招いた結果なのです。
3. 就活における「通過儀礼」
大学生の就活においても、「カルチャーフィット」や「主体性」という名のもとに不条理な選別が行われています。「就活は通過儀礼」とされる現実は、若者のキャリア形成に深刻な傷を残すと著者は警鐘を鳴らします。
こんな人におすすめ
- 部下との関わりに悩む管理職・リーダー層
- 人事・組織開発の担当者
- 「能力主義」に違和感を覚えつつ働き続けるビジネスパーソン
- 就活を控える大学生や若手社員
特に「人材育成」「ウェルビーイング」「人的資本経営」といったキーワードに関心を持つ方にとって、本書は従来の人事施策を問い直す契機となります。
この本を読んで得られること
- 組織への新しい視点
「傷つき」を認識することは、単なるメンタルケアにとどまらず、組織変革の出発点になります。 - リーダーシップの再定義
「強くあれ」ではなく、「傷つきに気づける力」こそがこれからのリーダーに求められる資質だと示します。 - 安心感の獲得
働く誰もが抱える心の痛みを言語化することで、「自分だけではない」と感じられる共感と回復のプロセスを提供します。
目次(抜粋)
- 第1章 「職場で傷つく」とはどういうことか?
・評価で「傷つく」
・部下ゼロなのに「リーダーシップ不足」とされる矛盾
・真面目な社員の「闇落ち」 - 第2章 「職場で傷つく」と言えない・言わせないメカニズム
・「個人の問題」にすり替えられる構造
・能力主義がもたらす追い討ち - 第3章 「能力主義」の壁を越える
・コミュニケーション能力という魔物
・管理職はつらいよ――リーダー層の「傷つき」 - 第4章 「ことばじり」から社会を変える
・「主体性のある人材」を本当に欲しているのか
・「傷つき」を共有する対話の力

職場で傷つく――リーダーのための「傷つき」から始める組織開発
著者:勅使川原真衣
本体価格:1600円+税
出版社:大和書房