「名医」はランキングでは見つからない。がん専門医が語る、本当に信頼できる医師の共通点とは?

「名医ランキング」やインターネットの口コミは、本当に医師選びの役に立つのか? がん研有明病院の高野利実医師が、患者と医師、それぞれの視点から、信頼できる医師を見つけるためのヒントを語る。
雑誌やウェブサイトで目にする「名医ランキング」。多くの患者さんが医師選びの参考にしていますが、医師自身はこれをどう見ているのでしょうか。そして、肩書きや評判だけでは分からない、本当に信頼できる医師を見つけるにはどうすれば良いのでしょうか。がんの病院・医師情報サイト「イシュラン」を運営、『後悔しない がんの病院と名医の探し方』(大和書房)を上梓した鈴木英介氏が、乳がん治療の第一線で活躍するがん研有明病院の高野利実医師に、医師の本音を伺いました。
目次
名医ランキングは医師選びの役に立つのか?
鈴木: 病院ランキングや名医ランキングといった特集記事はよく売れる、という話を耳にします。こうしたランキングは、高野先生のような専門家の目にはどう映っているのでしょうか?
高野: 自分の名前や病院が載れば、やっぱり嬉しいです。特に、若かった頃、小さい病院にいて、肩書もなかった頃に評価されたのは嬉しかったですね。
手術件数など、客観的な数字で評価するランキングも、施設のレベルアップや医師のモチベーションに繋がる側面もあります。
米国ニューズウィークでは、毎年「世界の病院ランキング」を発表していて、2025年のオンコロジー(腫瘍学)部門で、がん研有明病院は、世界33位から26位にランクアップしました(国内ではいずれも2位)。これをみて、私は、「いずれは1位のMDアンダーソンがんセンター*を超えて世界一になる」のが目標だと冗談半分でお話ししています。医師の間での受け止め方は、そんな感じです。
しかし、患者さんが医師を選ぶ際に、ランキングだけを頼りにするのは危険です。一番大事なのは、その医師との相性だと考えています。ランキングの上位にいるから、あるいは有名な医者だからといって、自分にとって良いとは絶対に限りません。実際に会って話をしてみる、そこで判断することが大事です。肩書きのある教授や部長よりも、あなたの話に真摯に耳を傾けてくれる若い先生の方が、よっぽど良い主治医になる可能性は高いでしょう。
医師から見た、信頼できる医師の共通点とは

鈴木: 先生から見て「良い医師」とは、具体的にどのような先生なのですか?
高野: これは難しい質問ですね。私たち医師が同業者を評価する際は、どうしても学術的な業績を重視しがちです。論文をたくさん書いているとか、臨床試験を自ら手がけているとか、国際会議で活躍しているとか。
でも、患者さんからみて信頼できるかどうかというのは、学術的な業績とは別のものです。世界的に活躍している有名な医師が、患者さんには冷たくて、評判がよくない、といった話を聞くこともあります。
患者さんのことを本当に考えているかどうか、患者さんの言葉に耳を傾けてくれるかどうかは、実際に会ってみて判断するのがよく、医師からの評価は必ずしもあてになりません。
医師にとっての評判や口コミ
鈴木: ネット上の評判や口コミを参考にする患者さんも多いようですが、先生方はどう見ていらっしゃるものなのですか?
高野:気になりますよね。自分のコラムにネガティブなコメントがつくとけっこう落ち込む性格なので、コメントはできるだけ見ないようにしています。医師としての患者さんからの評判や口コミというのも、自分で検索したりはしないので、あまり見る機会はありません。
でも、そういうサイトがあるのですね。他の患者さんの生の声があれば、医師を選ぶ上で貴重な情報源になるでしょう。ただ、誰が何の目的で書いたのかわかりませんし、それが真実かもわかりませんし、また、ネガティブな情報の方がSNSに流れて拡散しやすいですので、情報が偏っている可能性もあります。
ネットの情報や評判がすべてだと思い込まず、あくまで参考情報の一つとして捉えた方がよいでしょう。口コミから垣間見える医師の人柄や対応の傾向を参考にしつつ、最終的には自分自身の目で見て、話をして、判断することが重要です。それが、「後悔しない医師選び」のコツですね。
鈴木: ありがとうございました。医師から見た正直なご意見を伺い、患者さんが迷いやすい部分をクリアにしてくださいました。評判や肩書きに惑わされず、自分にとっての「相性」を大切にする。それが、信頼できる医師を見つけるための最も確実な方法なのですね。
本当に信頼できる医師の条件
- ランキングではわからない
- 知名度や肩書きよりも自分に寄り添ってくれるかどうか
- 会って、話して、自分で判断
*MDアンダーソンがんセンター
University of Texas MD Anderson Cancer Center。米テキサス州ヒューストンにある。がん撲滅を使命と掲げ、患者さんの評価、ケア、治療、がん管理をはじめ、がんの研究、教育、予防も含む包括的ながん患者医療サービスを専門とする、世界で最も高い評価を受けているがんセンターの1つ。
文/長谷川恵子
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この記事を書いた人

- 「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。









