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何のためにぬいぐるみを? 推し活、ぬい活、STAY会−−世代を超えてコミュニティ化するアイドルファン

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ストレイキッズのSTAY会

Stray Kids World Tour でKーPOPアーティストとして史上最多の販売数・収益を叩き出したスキズ。ファンのSTAYたちも8月22日の「KARMA」のカムバに向けて盛り上がっている。

Stray Kids「STAY会」は数珠繋ぎの人間関係

K-POPアイドルファンの間で、推しをモチーフにしたぬいぐるみ(通称「推しぬい」)を持ち歩き、様々な場所で一緒に写真を撮る「ぬい活」が社会現象として広がりを見せている。単なるグッズ収集に留まらず、世代や職業を超えたファン同士の交流を促進するこの活動、一体どんな活動なのか?。

【写真】STAYたちの愛がダダ漏れな「ぬい活」写真

K-POPボーイズグループStray Kids(スキズ)のファンによるSTAY(ステイ)会を訪ねた。8月22日の4枚目フルアルバム「KARMA」のカムバック(以下カムバ)に向けて、決起会と称した持ち寄りパーティーが開催された。参加者は20代から50代と幅広い年齢層で、都内の動物病院に勤務する獣医と看護師2名、その動物病院に通う猫の飼い主1名、その仕事仲間1名とその趣味友達1名という、数珠繋ぎ人間関係だった。

SKZOOが繋ぐ「野生のSTAY」

会合の主役の一つは、メンバーを動物化したキャラクター「SKZOO(スキズー)」のぬいぐるみたちだ。参加者それぞれが持ち寄った大小合わせて40体もの「SKZOO」が部屋に並べられ、ライブの余韻に浸るかのように見守っていた。1体数千円から送料を含めると1万円を超えるものもあるというSKZOOは、ポップアップイベントごとに新作が発売され、ファンの収集欲を刺激する。

看護師のSさん(42歳)は「昔からぬいぐるみ好きで、つい買ってしまう」と語る。中学生の息子がいるが、自分の寝室には過去に推しだったアイドルたちのぬいぐるみが所狭しと並べられている。「今はスキズが本命ですが、お迎えしたぬいぐるみを捨てることができないんです」という。一方、幼稚園児と小学生の娘を持つ会社員のHさん(46歳)は「これまでアイドルにハマったことはなかんですけど、応援の気持ちを込めて買っています」と推しの一環としてぬいぐるみを購入。おひとりさまでどちらかというとミニマムライフを楽しんでいるKさん(56歳)は、「この歳でぬいぐるみなんて欲しいとは思わないのですが、ライブに推しのぬいぐるみを連れて行きたいし、ファンサ(ファンサービス)をもらうためには推しのアイテムは必須なので徳を積むために買ってます」と、購買動機が多様であることを示す。

「ぬい活」は、推しぬいと共にカフェや観光地を訪れ、写真を撮る行為を指す。ぬいぐるみはバッグにチャームとして付けたり、透明なケースに入れて持ち歩かれ、近年では100円ショップでもクリアポーチが「ぬい活ポーチ」「推し活ポーチ」と呼ばれるほど一般化している。

このぬい活には、ファン同士を繋ぐ符丁としての役割もあるという。前出のSさんは「ぬいぐるみ以外にも、キーホルダーやスマホケースのシールで『野生のSTAY(街中で偶然見かける同じグループのファン)』を探している」と明かす。そんなことがあるのだろうかと思うかもしれないが、この動物病院に通う猫の飼い主のスマホケースに入っていたステッカーをきっかけに、見知らぬSTAY同士が繋がり、プライベートなファン交流会「ステイ会」へと発展したというエピソードは、共通の「好き」が人と人との新たな関係性を生み出す推し活の象徴といえるだろう。

K-POP推し活の「貢献」意識と「生きがい」

K-POPの推し活は、単なる音楽鑑賞やライブ参加に留まらない。看護師のNさん(38歳)は、「推しのCDを購入してランキングに入れたり、音楽プラットフォームで再生回数を伸ばしたり、投票アプリで投票するなど、とにかく推しの人気を高め、売り上げに貢献することが重要」と語る。カムバック(新曲発表)時には、CDに封入されるハイタッチ会やサイン会の抽選シリアル欲しさに、節約したお金を投じるファンも少なくない。獣医師のMさん(31歳)が語るように「CDの売り上げは人気のバロメーター。なんとしても推しを1位にしてあげたい」という強い貢献意識が、ファンを動かす原動力となっている。

日々の育児や仕事に追われる大人の女性たちが、なぜこれほどまでに推し活に熱中するのか。「アイドルたちの頑張る姿を見ると、自分も頑張らなければと思える。応援しているようで、逆に応援されていると感じる」「生きがい。彼らを考えるのはとても楽しいし、日々のストレスも吹き飛ぶ」「SKZOOはメンバーの特徴をよく捉えていて可愛い。ぬい活することで癒される」といった声が聞かれた。

彼女たちの推し活は、単なる趣味の範疇を超え、忙しい日常に活力を与え、自己肯定感を高める役割を担っていることがうかがえる。円盤(Blu-rayなど)鑑賞会やK-POPの聖地である新大久保でのランチ会など、活動の幅は広がり、その様子はSNSを通じて国内外のファンと共有される。

「集金」と「課金」のループも

「ぬい活」を含む推し活は、ファンが主体的にグループの人気向上に貢献し、同時に自身の自己の満足感を高め生きがいにまでなる。その一方で、ファンたちが「集金」と表現する間髪をおかずに発表されるグッズや多形態のCDに、ファン自身自ら「課金」していく新たな消費行動が生まれている。

単に「好き」を応援するだけでなく、共通の「推し」でつながるコミュニティ形成という楽しみをもたらしてくれる推し活だが、課金のしすぎはほどほどに。

文/長谷川恵子

この記事を書いた人

長谷川恵子
長谷川恵子編集長
猫と食べることが大好き。将来は猫カフェを作りたい(本気)。書籍編集者歴が長い。強み:思い付きで行動できる。勝手に人のプロデュースをしたり、コンサルティングをする癖がある。弱み:数字に弱い。おおざっぱなので細かい作業が苦手。

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