60代になっても副業だけで月30万円? 好きを仕事に取り入れるメリットがすごすぎる

50代からの副業スタート。研究と整理収納の“二刀流”で、自分の可能性を広げ続ける正保美和子さんの実践。
研究機関で働きながら、副業で整理収納アドバイザーとして活動する正保美和子さん。そのキャリアは、50代からもう一度、自分の“好き”と向き合うことから始まった。
「こんな働き方も、ありなんだ」と感じたという。
筑波大学生物学類を卒業後、製薬企業で研究員として30年間勤務。長年にわたり実験やデータ解析に携わってきた。転職を経て、現在は国立の研究機関に勤務する一方、研究現場に特化した整理収納の専門家として、講座や執筆、現場サポートなどを行っている。
目次
50代で整理収納アドバイザーの資格
副業の起点は、50代で取得した「整理収納アドバイザー」の資格だった。もともとは研究室内の片付けの悩みをなんとかしたいと思い、自分の学びのために始めたことが、思わぬ展開を呼び込む。
「研究室って、整理整頓の“グレーゾーン”が多い場所なんです。誰が何を置いているのか曖昧で、古い資料や試薬が山積みになっていたり。でも、それを変えようとすると、人間関係や文化的な壁にもぶつかる。だからこそ、体系的な知識が必要だと感じました」
2017年に資格を取得後、ブログを通じて情報を発信。研究現場の片づけというニッチな領域に注目が集まり、講演や相談の依頼が入るようになる。
売り込みなしで始まった副業
「副業って、自分から売り込まなくても、旗を立てれば見つけてもらえるんだと実感しました」
はじめての講演依頼は、想像以上の高額な報酬付きだった。「自分の経験や視点が“専門性”になる」という驚きと喜び。それが、人生後半のモチベーションを大きく変えた。
副業にあてる時間は週に3〜6時間程度。講演や記事執筆、現場サポートなどを、無理のない範囲でこなす。確定申告やホームページ作成など、未経験の領域にも挑みながら、少しずつ活動を広げていった。
「ネットに何か書くことでお仕事をいただけたこと自体が奇跡みたいなもので。最初から軌道に乗ったとは思っていないけど、失敗も含めて全部“経験”として受け止めるようにしています」
本業ではボスの研究を支え、副業で自分の研究
現在も実験業務を担う正保さんは、研究の面白さを「やっぱり本業が好き」と語る。一方、副業では自らがテーマを決め、自由に設計しながら働けることが魅力だと話す。
「研究所ではボスの研究を支えていますが、副業は“自分の研究”のようなもの。アイデアを出して、誰かに喜んでもらえる。まるで別の舞台で踊っているような感じです」
副業といっても、活動は決して趣味的ではない。最初にかかった資格取得や学習費は20万円以上。講座資料や名刺の作成、ホームページの維持費もかかる。「稼げなくてもいい」とは思わない。「稼げたほうが、お金を社会に回せるから」という視点も持っている。
「ニッチなテーマほど、見つけてもらうのが難しい。だからこそ、ブログやSNSで“届ける努力”を続けています。研究室で困っている誰かに、いつか届けばと思って」。そしてブログに加筆して『ラボ整理コミュニケーション術』をセルフ出版。
人生100年時代と言われる中、50代から新しいキャリアを始めることにためらいを感じる人は少なくない。だが正保さんは、「年齢を理由にしない」ことを信条としている。
「副業を始めた当初は、65歳まで本業が続けられるとしても、あと10年もないと思っていました。でも、その10年を“やりたいこと”で埋められるって、すごく贅沢なことなんです」
副業で得た報酬の最高月収は30万円ほど。だが、それ以上に「自分が誰かの役に立っている」という実感が、働く原動力になっている。
“好き”を深掘りすることが、自分らしさになる
「研究現場の整理収納」は、まだまだ世間には知られていない領域だ。それでも正保さんは、自らの好奇心と実感をもとに、丁寧に言葉を紡ぎ、発信し続けている。
「副業を始めたことで、新聞を読むようになりました。社会との接点が広がったからだと思います。好きなことを続けていると、自分の考えや行動がちょっとずつ変わっていくんです」
誰かに迷惑をかけることなく、自分に正直に、できる範囲で力を尽くす。そんな“ゆるやかな誠実さ”が、正保さんの働き方を支えている。
今後の目標は、研究現場における整理収納ノウハウを体系化し、多くの研究者や学生に伝えていくこと。いつか、「ラボ整理術」が当たり前の文化になる日を夢見ている。
人生後半のキャリアは、“好き”の延長線上にある。やってみたいと思った瞬間が、いつだってスタート地点だ。
関連記事
この記事を書いた人

- 「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。









