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60歳からのパラレルキャリア。「人生100年時代」の本業と副業リレーでさらに専門性を高める

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本業と副業を行き来しながら働く整理収納アドバイザー・正保美和子氏。研究職の経験を活かし、副業の中で見出した“もう一つの専門性”とは。

本業を続けながら、副業にも真摯に取り組む。そんな“パラレルキャリア”のあり方が注目されて久しい。だが実際に両立するとなると、時間、体力、調整力、そして情熱が求められるのも事実だ。

正保美和子さんは、製薬会社での30年のキャリアを終え、現在、国立の研究機関に勤務する研究業務員として働く。その傍ら「整理収納アドバイザー」として副業を行っている。研究室というニッチな現場に特化し、片づけや収納の支援活動を行う他、著書『ラボ整理コニュニケーション術』を持つ。

30年以上の研究員キャリアで見渡せること

「副業だからこそ、できることがあるんです」

そう語る正保さんの働き方には、ひとつの肩書きや組織に縛られない、新しい専門性の育て方が表れている。

筑波大学の生物学類を卒業後、製薬企業で研究員として勤務。その後、大学院の研究室を経て、2019年から国立研究機関に勤務している。

「研究室は、常に試薬や器具、紙の資料、実験サンプルに囲まれています。限られたスペースで安全かつ効率的に作業するには、整理収納の視点がとても重要なんです」

その必要性を感じたのは、自身が研究現場に長く身を置いてきたからこそ。ある日、「誰もが困っているのに、整理収納は体系化されていない」と気づき、自ら学び始めた。2017年には整理収納アドバイザーの資格を取得。副業として講座や現場サポートを行うようになった。

「私の強みは、現場経験と分析力。空間や物の課題を“問題”として捉え、解決策を考えるのは、研究ととても似ているんです」

整理収納ブログがきっかけで講演の依頼が

副業を始めたきっかけは、ブログだった。研究室の収納や片づけについて発信していたところ、突然、講演の依頼が舞い込んだ。

「自分から営業したわけではありません。“立てた旗を見つけてもらった”という感覚でした」

その後、問い合わせや講座依頼が増え、活動が広がっていく。初めての講演では7万円の謝礼を得て、「専門性に報酬がつく」という実感を得た。

「現場の工夫や知見が、別の現場でも活きる。そんな循環があるのは、副業ならではだと思います」


本業と副業の境界線をどう引くか

「研究の仕事も好きなんです。だからこそ、両方やりたいと思っています」

正保さんは本業と副業を明確に分けており、職場で副業の話は基本的にしないという。だが、採用面接時には自らのブログを読んだ上司から理解を得ており、「必要な信頼関係があれば成り立つ」と実感している。

副業にあてる時間は週に3〜6時間程度。無理のない範囲でスケジュールを調整し、体調や家庭とのバランスにも常に気を配っている。

「腹痛になりやすい体質なので、ストレスや無理は避けています。仕事のせいで体を壊すなんて本末転倒ですから」

ボスの言葉「幸せになるために仕事をしている」という考え方を大切にしている。

副業だから育てられた、自分だけの専門性

研究所の職場で得た経験は、そのまま副業の“ネタ”になる。逆に副業を通して磨いた分析力や伝える力は、本業にもプラスに働いている。どちらも自分にとって“本気の仕事”であり、そこに優劣はないという。

「副業って、自分の“好き”や“気になる”を原動力にできるから、仕事が苦じゃないんです。だからこそ、続けられるし、進化させていける」

ブログや講座資料を自作するなかで、WEBデザインや文章力の必要性も実感。今は「もっと上手に伝えられるようになりたい」と、学びを続けている。

小さな実践が、社会を変えていく

正保さんの活動の根底には、「研究現場にいる人たちが少しでも快適に働けるようにしたい」という思いがある。研究室の安全性や効率を高めることは、研究成果を支える土台でもある。

「ニッチなテーマだからこそ、困っている人には深く響く。私の経験が誰かの役に立つなら、それだけで嬉しいです」

副業だからこそできたこと。本業と両立するからこそ見えた課題。それらをひとつひとつ形にしてきた正保さんの働き方には、“自分らしい仕事”を探す多くの人にとってのヒントが詰まっている。

この記事を書いた人

I am 編集部
I am 編集部
「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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