キャリア設計副業に疲れた人こそ試したい。専門家がオススメする「社内ベンチャー」で“好きなこと”を仕事に近づける方法

「好きなことを仕事にしたい」——。そう願って副業を始めてみたものの時間が足りず挫折した、という人は少なくない。「だからこそ、最初の一歩は“社内創業”がいい」と語るのは、「退職学®︎(resignology)」の研究家であり、『「会社辞めたい」ループから抜け出そう! 転職後も武器になる思考法』(サンマーク出版)や『ゼロストレス転職 99%がやらない「内定の近道」』(PHP研究所)の著書を持つ佐野創太さんだ。
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「社内創業」で始める、小さな本音の実験
週5勤務の合間に副業の時間を捻出するのは、実際にはかなりのハードルがある。平日は残業、休日はプライベート。いくら好きなことを仕事にしたいと思っても、そんな中で“もうひとつの仕事”を成立させるのは簡単ではない。
佐野さんが提案するのは、今の仕事の延長線で、自分が本当にやってみたいことを試す”「社内創業」というアプローチ法だ。
「たとえば営業職の人が、社内のオウンドメディアで記事を書くようになったり、経理の人が営業同行を申し出たりといったケースがあります」
大きく何かを変えるのではなく、「いまの仕事の中にある“やってみたい領域”に、小さく手を伸ばしてみる」。それが社内創業の本質だという。
ある営業職の人は、月に数本のインタビュー記事を副業として書くようになった。もともとは「営業先のリアルな話を、文章として残してみたい」と感じたのがきっかけだった。
また、転職を考えていた経理担当者が営業同行を経験して、「実は外の人よりも、社内で支える方が好きだった」と気づき、転職を思いとどまったケースもあるという。
「仕事は与えられるもの」から「仕事は創るもの」へ
「社内創業」の大きな意義は、「仕事は会社や上司から与えられるもの」という意識から、「仕事は自分で創り出すもの」へと、働き方の視点が変わる点にある。
「自分で仕事を創る意識があると、目的も自分で決められる。そうすると、仕事に主体性が生まれ、楽しさや納得感も変わってきます」
それは結果的に、「好きなことを仕事にしたいけど、自信がない」「転職したいけど踏み出せない」といった悩みを解消する助けにもなる。
本当に転職したい? を見極める「ピークアウト退職」
それでも「やっぱり転職かもしれない」と感じたときにおすすめなのが、「ピークアウト退職」の“擬似体験”だ。
「ピークアウト退職とは、今の会社で“最も良い状態”のときに退職を目指してみる方法です。実際に退職しなくてもOK。転職活動を通して、自分が本気で辞めたいのかを見極めるんです」
“ピーク”には3つの形があるという。
1 「数字で見える成果」——営業や販売職での目標達成。
2 「プロジェクトの完成」——クリエイターやエンジニアが、自分なりの納得のいくゴールを迎えること。
3 「仕組み化」——管理部門などで、自分がいなくても回る体制を作ることだ。
「たとえば法務部の方で、自分の仕事をマニュアル化し、後輩に引き継いだ上で、“もう自分がいなくても大丈夫だ”と思えたタイミングで転職を決めた人もいます」
自分のペースで、自分の選択を
働き方の悩みは、つい「早く答えを出さなきゃ」と焦ってしまいがちだ。
だが佐野さんは言う。
「“会社を辞めたほうがいいのか”ではなく、“自分はどうしたいのか”を知ることが先です。自分の本音を磨いていけば、自然と答えが見えてきます」
SNSには「キャリアアップしろ」「市場価値を上げろ」といった強い言葉が並ぶ。だが、それに振り回されて“自分の声”が聞こえなくなっているとしたら、本末転倒だ。
「私だけのベストバランス」を見つけること。
そのために必要なのは、派手な行動よりも、丁寧な内省かもしれない。
文/長谷川恵子