経験を仕事形のない“光”で表現をつくることへの興味と、職業としての照明技術が結びついて「照明デザイナー」に(照明デザイナー/魚森理恵さん)
多様な働き方のリアルを聞きました!どうやって自分の仕事を確立したのか。「照明デザイナー」として、演劇や音楽ライブ、展覧会、作品制作など、ジャンルレスに活躍する魚森理恵さんに聞きました。
プロフィール
照明デザイナー魚森理恵
photo by Itsumi Okayasu
仕事内容と自分らしいビジネスアイデアの見つけ方
どんな仕事をしていますか?
表現素材としての光を暗示的/明示的に扱い、実演芸術や展示などの発表を上質に発現させるための照明デザイン活動を国内外の現場で行っています。大学講義や作品制作、「暗闇再考プロジェクト」など研究活動にも取り組んでいます。
今の仕事のキャリアは?
照明デザイン活動は約20年目、大学講師は5年目です。
なぜ今の仕事を「自分の仕事」にしたのですか?
美術大学で表現素材として光を使い始め、学内で知見を持つ人を探したら、舞台照明デザイナーの先生に出会えて、人脈と機会が増えたからです。
今の仕事は好きや得意なことですか?
もともとは困り事です。
美術大学に来た途端、受験疲れで絵画作品も立体作品も作れなくなり、形がないものや消えてしまうものに魅力を感じ、「光」という素材を扱うことに最も手応えを感じました。
美術より音楽への憧れが元々強かったので、消えてしまう視覚表現としての光に惹かれ、白黒写真の暗室で印画紙を感光させて写真を焼くプロセスや、真っ暗闇を作ることができる舞台芸術に、光と闇の多様な面白さを発見しました。
なぜ、今の仕事がビジネスとして成り立つと思ったのですか?
学生の時点で広範囲の人脈を得られたこと。出会えた人々とは、光を扱いたい動機が全然違っていたのに共同作業や知見の共有ができたこと、学生時代のうちから収入が得られるようになったことです。
「自分の仕事」としてやっていくと決めてから、やったことはなんですか?
飛び込み修行。
あなたの「強み」「弱み」は?
強み→まわりと違うことをやりたがる。
弱み→まわりと似たことをやりたがらない。
何かの行動や判断が、周りと違ったことのほうが子どもの頃から多かったため、後々自覚しました。
自分の強みをどう仕事に活かしていますか?
一般的なセオリーの運用では対応が難しい作品の案件が多いので、そういった特性を知ってくださった方々に、未知との遭遇の機会をたくさん頂いています。
自分の弱みをどう克服していますか?
技術の変化が激しい世界なので、キャリアを問わず、出会えた方々から常に学ぶようにしたいと思っています。
ビジネスを立ち上げる時の最大の壁は?
生活の安定とバランスをとりながら、今の仕事の割合を増やしていきました。
ビジネスを立ち上げる前に何を準備しましたか?
見て覚えろの世代なので、基本的に走り回っていました。威圧に晒されて性格が暗くなったので、あまり効率的ではなかったなあと思います。
ビジネスを立ち上げてぶつかった壁は?
ハラスメントは人の可能性と想像力を奪う、と被害を受けて数年後にようやく思えましたが、乗り越える手段があるとしたら、次の世代に繰り返さないこと。身近な方が困難に陥っていないか話を聞くようにしています。
1人社長ですか? それともチームですか?
1人運営です。プロジェクトごとにチームを形成して仕事を進めます。
仕事に求める優先順位は?
自分の特性が必要とされているか、を最も重視しています。他の方のほうが適性が高いなあ、と感じた案件は、仕事仲間を紹介します。
法人化していますか?
法人化が必要なほど案件があれば検討しますが、現在は家庭生活とのバランス上、仕事量の上限を設定しているので、いまのところ予定はありません。
会社員を辞めてから今の仕事をはじめましたか?
大学卒業後すぐフリーランスになりました。就職氷河期かつ、就職率が極めて低い芸術大学で、個々のスキルを使って「自分に就職」する人が多かったので、あまり違和感はなかったです。
はじめての仕事はどのように獲得しましたか?
学生のころに得た人脈で現場でアシスタントをしたときです。
最初に自分の力で稼いだお金を得たときの感想は? また、その額はいくら?
「Q17」で回答した仕事で初めて日当をいただいた時、これは仕事になるのか、と実感しました。学生にとっては驚く金額で、その先輩は、自分の金額設定を持つことや、見積・請求書を書くことを進言してくれました。
価格はどのように決めましたか? 価格設定で悩んだことは?
デザイン料は作業時間と内容に基づいて都度相談し、日当は公開されている公共施設の技術人員日当を根拠に、自分のキャリアの変化に応じて、毎年悩んでいます。
ビジネスが軌道に乗るまでの期間とその間のやりくりは?
6年目には、アシスタント業よりも自分のデザイン仕事の収入が上回ったので、自分の仕事が中心になっていました。