1. 「筋肉美を活かした日本初の筋肉ビジネスを構築

    僕は株式会社スマイルアカデミー(以下スマイルアカデミー)の代表であり、「筋肉紳士集団ALLOUT」というマッチョなメンズのチームを運営、かつそのメンバーでもあるマッチョ起業家です。筋肉紳士集団ALLOUTは筋肉美を備えたイケメン集団で、筋肉を使ったパフォーマンスを行ないながら、筋肉の魅力やトレーニング、フィットネスの必要性を発信しています。メインメンバーは40人ほどですが、その他にボディーハッカー(体を改善するという意味)のメンバーが全国各地に500人登録している、全国規模のマッチョチームです。

    アイドルが集団でパフォーマンスすると、よりかわいさが増すように、筋肉の魅せ方を心得ているイケメンマッチョが10人集まるとなかなかの圧迫感で、その場のテンションが一気に高まります。それを武器に、福岡や東名阪を中心として各地にチームをつくり、鍛え抜かれた筋肉に触れ放題という「マッスルカフェ」というイベントをはじめ、バラエティー番組やCMなど、マッチョを専門とした企業プロモートをメインに行なっています。

    また、筋肉をより身近に感じてもらうために、メンバーが様々なシチュエーションでポージングした写真を無料でダウンロードできる、マッチョフリー素材のサイト「マッスルプラス」を展開するなど、マッチョなメンバーの活動機会を創り出すため、日々試行錯誤をしています。

  2. 事業内容を決めずに独立し、会社を設立

    今でこそ「筋肉」というテーマが決まり、精力的に活動していますが、会社を設立した5年前には筋肉をビジネスとすることはもとより、「これがやりたい」という確固たるものもありませんでした。

    起業のきっかけは、仕事に対してのモチベーションと営業成績の低下でした。前職は人材系の営業でしたが、事業内容を覚えていくにつれて仕事に対しての興味が薄れ、それに伴い営業成績も落ちる一方。「辞めたい」というネガティブな気持ちと、「自分がやるべきことはここにはないんじゃないか」という疑問が芽生え、まず「会社を辞める」と決め、何かやりたいことができた時に、自由に動けるように会社を作ろうと思い、独立をした後すぐに、一緒に退職した同期と二人で会社を設立しました。

    事業内容も決めずに会社を辞め、失業保険ももらわずに、とりあえず会社だけ作った。

    字面で見たら自分でも「まぁまぁアホやな」と思いますが、“考えついたら、即行動”。というこのスピード感が、前職では味わえなかった、僕たちの求めているところだったのでしょう。

    もちろん、これからに対しての不安はありました。頭の中は常に不安半分、あとの半分は「やるしかない」「何でもやるぞ」という気持ちでした。でもこの“不安”は前に進むしかない僕たちにとって悪いものではなく、常に何かを生み出してやろう“活力”に転換され、様々なことに挑戦する“動力”になりました。

    だから、やりたいことに向き合うのは、早ければ早いほどいいと感じています。もちろん人や場合によりますが、やはり若い方が圧倒的にタフでフットワークが軽く、スピーディーに動けますから。僕自身も、会社員という立場が自分に合っていないと感じていたので、もっと早く辞めてもよかったと思っています。

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  3. 継続は大事だけど、違うと思ったら早くピボットする

    会社の理念は、“スマイル メイク スマイル”。「ただお金を稼ぐだけの事業は気持ちが入らないし、やりたくない」「社会や世の中のためになって、関わる人みんなが笑顔になれるような会社を作りたい」という気持ちから、『スマイルアカデミー』としました。

    その『スマイルアカデミー』で最初に行なった事業が、子どもの学童保育。ニュースや世間を見ていても、シングルマザーが子育てしながら仕事をすることが大変だと感じていたので、学童保育の中で僕たちができることはないかとやり始めましたが、ビジネス的にはまったくうまくいかず、すぐにリリース。

    また、企業向けの福利厚生サービスのウェブサイトを立ち上げ、契約した社員が使えるようなサービスを作ったりもしてみましたが、こちらも結果が出ず。

    ある程度ビジネスモデルとサービス単位を考えつつ、同時に顧客開拓。さらに動きながら、サービス事業の内容をどんどん改善する。それでもダメだと思ったら、すぐにリリースして新しい事業を展開、という形で、とにかく営業をかけ、人脈を広げていきました。

    その当時、社員は一緒に会社を立ち上げた元同期とエンジニアの3人だけ。とにかく自分たちが動けば物事が進むので、約1年半はがむしゃらに動きました。もちろんその間は収益がなかったので、会社員時代に貯めてきた蓄えを切り崩しながらの生活。筋トレする者としてあるまじき、「食を削る」ことをしてしまったので、この時期、筋肉がずいぶん減ってしまいました。

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  4. 「全人類筋トレすべし」精神がビジネスにつながったワケ

    そんな厳しい状態でしたが、ジム通いは欠かしませんでした。やはり体が元気だとポジティブになり、心身ともにいい状態をキープすることができます。僕の場合は、ハードな筋トレで自分を追い込むため、そのキツさで悩みが吹き飛び、さらにぐっすり眠れるので、翌日は頭スッキリ。仕事に行き詰まっているときほどトレーニングで頭をクリアな状態にすることが、問題解決につながる最も有効な手段だと実感しているので、「全人類筋トレすべし」が僕の座右の銘です。

    僕はもともと体が弱く、小学校低学年までは小児喘息を患っていてほぼ毎週病院に駆け込んでいました。体が細いのがコンプレックスだったので、体を鍛えるために陸上競技をはじめ、高校からは体力アップも兼ねて筋トレも取り入れました。筋力がつくと同時にポジティブになり、社交性もついていったのは、小さい頃から持っていたコンプレックスから解き放たれたからでしょう。だから、筋トレやフィットネスの魅力、重要性を強く感じていて、それを多くの人に伝えたいという気持ちがどこかにあったのだと思います。

    その思いがビジネスにつながったのは、ジムで出会ったあるトレーナーさんから誘われた、ボディビルコンテストがきっかけでした。当時は趣味で筋トレをするレベルだったので、そういう大会があること自体知りませんでした。だから減量や体作りにしっかりと取り組んだのは、この時が初めてでした。そして大会当日、20代、30代で体を作り込んだ“シュッとした”男性たちの姿を見て、「こんなにカッコいい人がたくさんいる」ということに衝撃を受けました。

    そして、短期間とはいえ自分も本格的に体作りを体験したからこそ、せっかく時間やお金をかけてしっかりと体を作り上げているのに、その肉体美が生かせる場所がないことがとてももったいないと感じ、何かできないものかと考え、今の筋肉事業に思い至ったのです。

  5. 需要はどこにあるかわからない「筋肉触り放題」イベントに手ごたえ

    ただ、それまで筋肉ビジネスというものが世の中になかったので、どうしたら世の中に受け入れられ、筋肉を広められるかを、イベントの企画をしながら模索し続けました。

    そんな中、福岡で「マッスルカフェ」という、“筋肉触り放題&熱狂し放題!”をコンセプトにした自社のイベントを開催したところ、想像以上に集客があり、実際に筋肉に触れたお客さんが予想以上に喜んでくれたのです。そのときに、「筋肉にはニーズがある」と改めて感じました。多くの人にとって、あれだけ美しく作り上げた肉体の集団を見たり、触れたりできる機会ってそれほどありませんから。

    そこで、東京でもマッスルカフェを開催しようとリリースを出すと、数時間でチケットが完売。その次の回もすぐに完売となり、徐々にクライアントのついたイベントを行えるようになりました。お客さんだけでなく、接客するメンバー、クライアントの3者すべてにとって満足度が高いイベントになってきていることに手応えを感じ、今はそれを少しずつ広めていっている状態です。

    筋肉ビジネスを始めた頃は、懐疑的、批判的な意見もありました。ところがメディアに取り上げられるようになってから世間の目が変わり始め、営業に行っても、「面白いことを展開しているね」と反応がもらえるようになりました。とくに、筋肉と関係性がないものとコラボすることで非日常感が出せ、インパクトのあるプロモーションが打ち出せるということで、興味を持ってくれる会社が多くなってきました。

    ただ、せっかくマッスルカフェが軌道に乗り始めたところで、まさかコロナの流行。今まで収益が多かったイベント系のキャスティングや、リアルイベント関係がストップ状態になってしまいましたが、CMやMV、YouTuberからの出演依頼など、映像関係をはじめ、幅広い案件の依頼をいただくようにもなりました。

    また、コロナ禍でも体を鍛えたいという需要はありながら、スポーツクラブには行きづらいという方が増えたことにより、福岡で8店舗展開しているパーソナルトレーニングジムの利用者が増加。コロナ禍でも筋肉はきちんと収益をあげられるビジネスモデルに成長しました。

  6. ポテンシャルに違いはない違いをうむのは気持ち

    起業したものの、何を行うかが決まらず迷走した地獄の1年半。あの紆余曲折の時期があるからこそ、筋肉をビジネスできた今は、毎日が楽しく、好きなことを仕事にできたという実感があります。

    もちろん物理的、時間的にキツイと感じることは多々あります。例えば、マッチョフリー素材の撮影は、1枚1枚体を力ませてポージングするので、1日中行うともうヘロヘロ状態ですが、撮影を終えてもその画像のアップや事務作業など、やらなければいけないことは山ほどあります。でも、自分がやりたいことの一環だから「やって当たり前」と思え、辛いと感じたことはありません。会社員時代は、“やらされている感”が強く、「その役目は自分じゃなくてもいいんじゃないか」という気持ちがどこかにありました。だからやる気が起こらず、成績につながらなかったのだと思います。

    人のポテンシャルは気持ちで大きく左右されるので、仕事ができる人とできない人の違いは、それほど大きくないと僕は考えています。では、その違いは何かというと、どれだけ“情熱”を持ってその仕事に取り組めるか、ということです。

    会社員時代には、仕事に対しての情熱が足りず、逆に今はそれが常に持てているから、同じような事務作業でも以前はイヤイヤでしたが、今は事業を円滑に進める手段だから苦にならないのだと思います。

    しかも、今、うちのオフィスはジム仕様になっていて、きっちりしたオフィスエリアがありません。だから、PC作業で疲れたらちょっと横に移動して筋トレをしたり、筋トレのインターバルの間にZoom会議したり。そういう意味では筋トレや事務作業の境目がなくなって、仕事の一部としてできる環境になっていることも、苦にならない一因なのかもしれません。

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  7. 会社員時代のトラウマ? だから絶対無理しない

    うちの会社の方針は“無理をしない”。「筋トレで自分を追い込むトレーニー(トレーニングする人)なのに?」と思われるかもしれませんが、無理と追い込みは違います。追い込みは自分の体の状態を冷静に見極めて行いますが、無理は理由や道理がないのに行うので、能力以上の負荷が精神や肉体にかかってしまい、余裕がなくなってしまう。自分たちが楽しくないと、僕たちと関わるいろんな方々にも楽しんでもらえないと考えているので、精神的にキツイという状態は作らないようにしています。

    もしかしたら“無理をしない”ことを方針に掲げたのは、会社員時代に売り上げに追われていた反動かもしれません。売り上げに関しては本当にシビアだったし、滅茶苦茶言われて詰められるし、そのために何かよく分らない入力作業を強いられることが多かった。「これ本当に意味があるの?」と思いながら仕事していた経験から、「無駄なことはやらない」というスタンスになったのでしょう。

  8. 運命的な職業との出会いをするために

    好きなことがある人は、まずそのことをそのまま突き詰めていくといいと思います。さらに、それを仕事にしたいのであれば、その魅力や必要性を、より多くの人に知ってもらう、伝えるということを始めると、それがビジネスや事業につながっていくと思います。僕も筋トレが好きで、その筋トレや筋肉の魅力を発信したい、伝えたいという思いが、こういう形になって広まってきていますから。

    だから、やりたいこと、好きなことがある人は、それをどんどんやり進めていったらいいと思います。まだ好きなことがみつからない人は、とにかくいろんなことをやるしかない。チャレンジを恐れず、いろんなことをやってみたり、いろんな人に会ってみる。そうすれば、すぐに答えはでなくても、やり続けた先に何かしら見えてくると僕は思います。

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