他人と異なる感性はビジネスでも強みとなる

「透明を色だと思っているんですね」と言われた時、
人生が動き始めた
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プロフィール / tomei

クリエイター 東京都出身。透明なものをこよなく愛し、自ら作ったり集めたりしたものを、SNSで発表し話題を呼ぶ。以後、SNSを中心に、書籍や雑誌などで活動中。夢は透明な博物館をつくること。
2021年よりフリーランスにて活動する。

Twitter @tomeinohito
Instagram @tomeinohito

「透明」を色として認識したことはありますか?
正直、私は「透明」を色として認識したことはありません。
「透明」は無味無臭。「空白」または「存在しない」もの。そして、そもそも「透明」について考えたことはありませんでした。しかし、この「透明」が「存在する」ものであり、心を揺さぶるような美しさを持っている事を教えてくれたクリエイターさんが透明愛好家tomeiさんです。

透明愛好家tomeiさんは「透明」の美しさを際立たせたスイーツや表現、世界観をSNSで発信し、瞬く間に話題となりました。2020年『世界一美しい 透明スイーツレシピ』(KADOKAWA)を出版。メディアでも紹介され、仕事の幅が一気に広がったといいます。

しかしその「透明」を表現する以前は「透明が好き」ということを誰も理解してもらえないのではないか、という葛藤もあったそうです。しかしその後、その葛藤が実は「最大の武器」と気付ける瞬間に出会います。

またクリエイターとして独立するにあたっての不安、表現を絞り込むことで仕事の幅が狭くなるリスク、また一時の話題で終わらせずに今後どう展開していくのか。自分の好きを活かしながら仕事も得ていくための心得等、Q&A方式で伺いました。

▼目次
「透明」に絞り込んで活動するスタイルについて 究極のシンプルに舵を切った理由とは何でしょうか?
tomeiさんの活動写真

究極のシンプルに舵をきったかと自分に問いかけてみると、実はそうでもないのかもしれないというのが本音だったりします。「透明」という存在は自身の好きなものの中の一つです。好きなものはいくつあってもいいなと思っていて、一つの光が「透明」に照らされたような…気持ちとしてはそんな風に捉えています。

今は、透明愛好家として活動する他にもフリーランスで写真や動画の制作関連のお仕事をしたりしています。表現方法のひとつとして、写真や映像に出会ったのは本当にここ数年のことで、もともと小さい頃から絵を描いたり、お菓子を作ってみたり、服、キャンドル、アクセサリーなど、 気になったものは作ってみるといった感じで細分化しないまま、ものづくりそのものを楽しんでいました。

それらを経て思うのは、写真や動画を通して伝える他にも、こうして言葉を綴ったり、 雑貨を集めてみたりなど、好きを表現する方法はたくさんあることを日々実感しています。

作風を固定することで仕事の幅が狭くなるデメリットはないのでしょうか?

作風というのはその人らしさが表れる良さがつまっていると私は考えています。「作風」というのは捉え方によっては強い味方にもなり、時には人を縛ってしまう不思議な存在で、 あまり意識をしすぎない事も大切なのかなと思います。その人らしさというのは小さな変化を積み重ねていくうちに自然と滲み出てくるようなもので。
「透明」に関しては、「好き」という気持ちで始めたものですから、メリット、デメリットなどで天秤にかけることをあえてしていないのはあります。

好きなものだからこそ続けられる、でも好きなものだからこその葛藤はありませんか?

透明愛好家としてお仕事をする中で、「作品との調和」という点では自分の中で葛藤が生まれる時はあります。
それは自分ひとりだけの作品ではないからこそ生まれるもので、お互いの世界観を引き立たせながら作品を落とし込んでいく上で大切な要素であったりします。
自身にとって作品作りは、作品だけで完結ではなく作品を置く空間や新しい要素と合わせた時に、心通わせるように多種多様な要素を紡いでいってようやっとその形ができあがります。そうした葛藤の先には、やはり自分ひとりだけでは辿り着けないような新しい気づきがあったりして、料理のレパートリーが広がるみたいに、葛藤すらも楽しんでいくようにしています。

SNS の反響だけでフリーランスに踏み切ったのでしょうか?

SNSで応援してくださるフォロワーのみなさんが背中を押してくれたことは大きかったかなと思います。
フリーランスになる以前は、平日は朝、透明な写真を撮影した後、会社員として働く傍らで、 休日は写真や映像のお手伝いをしながらといった3足のわらじというんでしょうか。そんな生き方をしていて、透明愛好家としての作品作りのご相談をいただける機会が 嬉しいことに増えてきたこと、そして自分と向き合った時にこれから何をしたいかと問いかけた時に、透明愛好家としての時間をもっと作っていきたいという気持ちになったことがフリーランスへ踏み切る一つのきっかけになりました。

フリーランスに踏み切るまでの不安な気持ち、それでも踏み出すことが出来た理由は?

今の時代は色々な生き方があると思います。会社に勤める傍らでものづくりをしたり、 趣味の延長線にあるものであったり、専業で専念したりなど。 自身としてはただ「やれなかったことがあって後悔しないように。」
それだけは大切にしています。そのやりたいことにしっかりと向き合っていくための選択肢としてフリーランスの道があったという感じです。
あとは、「自分が良いと思った人生を選択した先にはどんな未来が待っているのだろうか。」という一つの好奇心が自身を動かしているんだと思います。

透明という作風に限界はないのでしょうか? 流行り廃りなど、どう捉えていますか? 限界がこないために取り組まれていることとはどんなことでしょうか?
tomeiさんの活動写真

「透明」はずっと昔からあり続けていて、それらを再認識してくれる方が多いか少ないか。流行り廃りというのは一つの波の流れのようなものだなと考えています。

もちろんひとりでも多くの方の目に触れてもらうことは嬉しいですが、たったひとりでも心に響くようなものであることが何よりも嬉しいので、あまり流行り廃りという物事に関しては考え過ぎないようにしています。 波には抗うことなく、流されるがままにです。

作品作りの幅ついては、「ゼリー愛好家」というよりも「透明」という色そのものが好きなので、そこに色があり続ける限りアイデアは広がっていくと個人的には考えています。 ゼリーという食べ物に限定されるレパートリーよりも透明色を用いたものの種類は豊富です。
透明な料理、雑貨、インテリア、建築、アート…etc 「透明」は組み合わせ次第でアイデアの引き出し箱を増やしていける材料のようなもので、そういった点ではマイナーなようで、幅が広がりそうな自分の「好き」や「興味」を掘り下げてみると、新しい世界が広がるきっかけになるかもしれませんね。

tomeiさんのように活躍したいと思っている読者へアドバイスするとしたら、どんなアドバイスをされますか?
tomeiさんの活動写真

アドバイスをすることがなんだかとても恐縮で、ひとつ自分の経験をお話するなら、透明愛好家として活動を始める前に、あるとき友人たちとの雑談の中で、「好きな色を3つ教えて。」と聞かれた際に「白、水色、透明。」と咄嗟に口に出したことがありました。
「透明を色だと思っているんですね。」と返された時が周りと自分との違いに気づく瞬間でした。
他人との違いに思い悩む事もありましたが、今思い返すとその違いに気づけることはかけがえのない時間だったと思います。自分のことは自分が1番わかっているようでわからない時もあったりするものです。
自身が道に迷ったときに導いてくれたのは、意外とすぐそばにある日常そのものだったりします。 それらは人を介して気づく事もあれば、一人で過ごす余暇の時間にふと気づく事もあるかもしれませんね。

tomei さんがご自身のお仕事に対して一番大事にしているポイントは何でしょうか?

大事にしていることはたくさんありますが、1つあげるとするなら、 お互いが心地よく進めていけるようにと心がけています。 お仕事のご相談をしてくださる方々はみなさん本当に優しい方々ばかりで、 いつも救われるような気持ちでものづくりをしています。その気持ちに精一杯答えていけるようにとひとつひとつ丁寧に取り組んでいます。

tomei さんご自身がフリーランスになる前、また直後の悩みを、未来(現在)のご自身がアドバイスするとしたらどんな言葉を掛けますか?またどんなアドバイスが欲しかったですか?
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「何かに立ち止まる瞬間も、悩みや失敗があったとしても、それらが無駄になることはないですよ。」とだけ一言伝えます。
時にまわりを道することで学ぶ経験は、時を経るごとに確かな気持ちへと変わると信じて、今も昔も、そしてこれからも起こりうるものごとを受け入れていけたらと思います。