Interview
インタビュー

デビュー作『リアルアカウント』累計350万部! 漫画家・オクショウは、なぜYouTuberにもなったのか!?

現役の売れっ子漫画家が、なぜYouTubeでダブルキャリアを目指すのか。見据えた未来と、そこに至るまでの「失敗と成功と失敗」について伺います。

オクショウ

プロフィール

ミリオンセラー漫画家オクショウ

1992年生まれ。漫画原作者、放送作家、脚本家、演出家、プロデューサー、YouTuber。『リアルアカウント』(講談社)は累計350万部超。現在『ノー・レセプション〜電波の無い国〜』(秋田書店)『ゲーセンの彼女』(KADOKAWA)など連載中。また漫画家志望者向けのYou Tubeちゃんねる『漫画家オクショウチャンネル』も開設、登録者は約2万人。ストーリーを中心に教えるチャンネルとしてはトップを走る。

デビュー作『リアルアカウント』累計350万部。新連載『ノー・レセプション〜電波の無い国〜』がバズりまくっている1992年生まれの漫画家・オクショウさん。「350万部売れたら印税で一生、左うちわでしょ!」と思いきや……。YouTubeチャンネル開設して収益化したり、講演会したり「どんだけ働くんですか?」と聞きたくなります。

なぜ現役の売れっ子漫画家が、YouTubeでダブルキャリアを目指すのか。見据えた未来と、そこに至るまでの「失敗と成功」について伺います。

初作品『リアルアカウント』は、なぜヒットしたのか

『リアルアカウント』はひとことで言うと、ツイッターのフォロワーが減ったら死んじゃうみたいないわゆるデスゲーム漫画です。当時、僕は大学1年生で、「なにかSNSを絡めた話をつくろう」と考えていたのですが、題材にネットを使うだけじゃ人の心に響かないなと思っていたところでした。

ちょうどTwitterが流行りはじめて、iPhoneもまだそこまで浸透していなくて、Facebookが今以上に全盛期だった頃です。プロフィール欄に交際中などいろいろなステータスが書けるのですが、僕は本当に人生で1回も彼女ができたことがなくて。その時も「モテる奴はくたばれ!!」とか思ったりしていて……。それで「ネットを使ってリア充で調子に乗っている人がくたばる漫画を描いたら面白いな」と思って、リアルアカウントはうまれました(笑)。それにこそが僕の創作原動力でもあります。

他にもテレビは東京だと5チャンネルありますが、僕の出身の宮崎では2チャンネルしかなくて。本や雑誌も2日とか3日とか遅れて発売されるから、もうコンテンツに飢えてたし、心のどこかにネットへの憧れがあったんです。でもネットにつながるのって、最先端であり、危険もはらんでいるじゃないですか。そういうところと個人的な思いが相まって、うまく形になったのかな、と。人の核となる部分を作品に昇華できたのがよかったと思っています。

「絶対にクソ売れる漫画描く!」の源泉は?

教室の端っこで漫画を描いているような、よくいる子供でした。基本はネガティブ思考で、田舎に住んでいたから都会への憧れや妬みもありました。でもなぜか、やる気だけはあるんですよ。「根拠のない自信が大事だ」、って秋元康さんもよく言っていますよね。高校3年生の頃、テレビや漫画でおそらく素人の方がめちゃくちゃ調子に乗っていたので、「あれ、俺こんくらいなんかできんじゃね」って謎の自信があったんです。

漫画家になってからも基本は性格が悪いので、話題の漫画を読んでも「面白い」って絶対に言えない。だから、「こんなバズりやがって……!」と思いながら、「それより売れるもん書いてやる!」って精神でずっと来ています。基本僕、自分の漫画はどれも自分のことしか書いてないんです。作者のリビドーみたいな負の感情を作品のエンタメに昇華する、っていう風な創作を生きがいにしています(笑)

それに加えて、漫画家の前は放送作家やライターの仕事をしていたからか、作品と、その後のビジネスまでをワンセットで考えて描いている気がします。今の連載も、『ノー・レセプション』は最初から海外ドラマにしたいなと思って描いていますし、もう一つ『ゲーセンの彼女』はそのままアニメに出来るように最初から考えてつくっていたり。マーケティング思考も強いというか……本来は編集さんが考える仕事なのかもしれないですけどね。

作品がヒットしたことで順風満帆だと思われていることが多いけど、まったくそんなことはなくて、失敗してきたことの方が多いですね。たくさん失敗してきた中で、少し上手くいっただけで、本当に9割失敗しかしてないです。今もですし。

漫画家としてはあれが1作目ですが、放送作家やライターもしていたし、実はYouTubやニコニコ動画もやっていたんです。YouTubeも「何これすごいじゃん!」と思って始めたけど、周りの理解が得られなかったりして途中でやめちゃったんですよ。今また新たにYouTubeをやっていますが、「あの頃からずっと続けていたらなぁ」と、すごく後悔していますね。

とりあえずいろいろやってみて、いろいろ失敗した結果、「人と話して何かをしたり、まとめたりすることが全然向いていない」っていうことが分かったんです。そういう弱点や苦手をつぶしてみたら今の細々一人でやる仕事が向いている、ってのがすごく分かって、今があるって感じですね。

今は「読みやすい」「わかりやすい」ものしか売れない

『リアルアカウント』の次として、「次もこんな感じでやっていけば売れるだろう」くらいに軽く考えていたのですが、まあそんなことはなくて。今、新しいのいっぱい描いていますが、そんなにまた上手くいくとは思っていないです。

漫画って、実はすごく綱渡りな仕事なんです。たとえば、死ぬほど売れた漫画の作者でも次回作はあっという間に終わることもあります。漫画の世界はそういうものなんです。

特に僕は原作者なので、作画の先生が別にいるのですが、以前やっていた『バックステージ』という漫画は、作画の先生が体調を崩し、連載が終わってしまいました。先生のせいとかではなく、単純に「世の中いつどうなるかわかんない」という想いです。

少し話はそれますが、売れている漫画って、「読みやすい」「誰にでもわかる」というものが多くなってきています。もちろん売れているには理由があって、すごいところもあるんですけど。

漫画だけでなく、小説やビジネス書も今はベタでわかりやすいのが一番売れる。だから読んでもらうためのきっかけとなるキャッチーな「側」がより大事になってきます。

自分でもうそれが分かっているので、今は2つ大きな連載を持っていますが、それらも今度新しく始めるやつも、わかりやすいけど側で新しくっていうか。今までやった漫画も「もし電波がなくなったら?」とか「ネットの世界に吸い込まれたら?」みたいに、手にとってもらいやすい発想は大事にしています。

今連載している『ノーレセプション』は、実は『リアルアカウント』と同じ時期に思いついたんです。『リアルアカウント』がネットの話だったので、逆にネットが全部なくなったら面白いなと思ったんですけど、10年前には響かなかったんですよね。でも今なら、スマホなくしたら致命的じゃないですか。テレワークも普通にするようになったし。だから「今ならいけるんじゃないか?」と思って描いたら連載になりました。現在2巻まで出ていますが、売れなかったら終わるんで、とにかく売れて続けられればなあって。ありがたいことにツイッターで3万いいねくらいついていますが、バズったからって売れるわけでもないですし、ほんと厳しい世界だと思います。

漫画家オクショウがYouTubeをやる理由

オクショウチャンネル

僕は死ぬほど失敗してきたので、漫画がずっと描けるとも思っていません。だから教える側に回る手もあるかと思い、YouTubeチャンネル『漫画家オクショウチャンネル』をやっています。続けてもう3年で登録者数はあと少しで2万人ほどです。たまに出身大学の講師として呼んでいただくこともあるので、そういう仕事もにもつながるかな、と。

僕を含め、漫画を描くのが好きな人って、めっちゃ喋りが上手い人は少なかったりするんです。YouTubeをやっていることでそこから仕事につながったり、しゃべる仕事もいただけたりするので、これも一種のポートフォリオというか、実績になるかなと思っています。漫画を描きつつも別の道にも行けるサブプランを用意しているイメージです。

YouTubeでは漫画の描き方、特にストーリーの作り方を教えていることについて、「そんなに教えちゃって大丈夫?」って聞かれますが、たぶん料理レシピと同じだと思うんです。たとえば、ミシュラン三星のレストランが「この食材を使って料理をします」と公開しても、同じように作れる人ってあんまりいないですよね。別に作り方はどうでもよくて、最終的にその人の生き様とかセンスとか経験とか、それが漫画とか作品になっていくんで。だから別に教えてもいいかなって思っています。それに教えることによって自分の考えが整理されるし、気づくこともたくさんあるんですよね。

長編ものって作るのが大変なイメージを持たれがちですけど、紐解くと実はそんなすごいことじゃなくて、起承転結の組み合わせなんです。100巻なら100巻っていう枠組みで起承転結があって、その中の〇〇編の中で起承転結があって、その中の1話の中でまた起承転結がある。要はちっちゃい枠組みと、大きい枠組みで、やっていることは一緒なんです。

多分、僕に少し価値があるとしたら、「抽象的なものを多少でも言語化する」っていうのはひとつあるかなと思っていて。だから、たとえば描き方のモヤッとしているところを動画にしたり、世の中が不満に思ってることを言語化して作品に入れているのが、興味を持ってもらえるところなのかもしれないです。

オクショウチャンネル

本当は、YouTubeもSNSもやりたくないんですよ。たとえば東野圭吾さんがTwitterで「お昼何食べようかな」とかつぶやかないですよね? 僕も東野さんのようなカリスマ作家になりたいんです。

次の漫画が死ぬほど売れたりしたら、YouTubeを続けるかは……謎なところです(笑)

取材/I am 編集部
文/堀中 里香

この記事を書いた人

堀中 里香
堀中 里香取材・ライティング
知りたがりのやりたがり。エンジニア→UIデザイナー→整理収納×防災備蓄とライターのダブルワーカー、ダンサー&カーラー。強み:なんでも楽しめるところ、我が道を行くところ。弱み:こう見えて人見知り、そしてちょっと理屈っぽい。座右の銘は『ひとつずつ』。
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